2019/11/1-4・西表島 透明度10-30m 水温26℃
もうかれこれ17,8年も前になるかな?
当時僕が勤めるダイビングスクールに入ってきた、同い年の
「コメキ」:通称。
素朴で、正直で、いつも自然体で、
人に騙されても騙すことは絶対に無いと断言できる、そんな男。
垂直飛びがズバ抜けていて、
小田急藤沢駅の階段をゼロ助走で4段飛ばしで駆け上がり、
僕に何度も敗北の辛酸をなめさせた男。
時は流れ、その彼は西表島にダイビングボートを浮かべ、
一歩踏み込めばジャングル、フィンでひと掻きすればサンゴの森
そんな西表島に自分のお店を構えている。
その人柄は昔のまんま。
大自然にうまく調和し、西表島がとてもよく似合っている。
が、今の彼からは階段を跳ね上がっていた面影はない。
40歳を超えて膨らんだ顔・腹・太腿を見るに、今一度藤沢駅の
階段の下に共に立てばあるいは勝機があるような気がする。
そんな彼に、この旅のメンバーと西表島にお邪魔し、
のんびり潜りたい。
綺麗な海が良い。
マンタが見たい。
カメとも泳ぎたい。
寒いのは嫌だ。
などと、思いつくままの要望を伝え全権を託した。
広大なリーフに守られた沿岸には大波は来ず、
顔をつけた海は南国の青さをたたえ、
浅い深度にサンゴの森と、色とりどりの魚たちが
ひしめいていた。
26℃の温かい水温はストレスとは無縁で、それは、
スキル弱め・エアー早めのカトーさんが、自分が
向上したのだと錯覚するには十分な快適さだった。
(翌々日、それは妄想だったと気づかされていたようでしたが・・・)
もうこの時点で、
のんびり。
綺麗。
暖かい。
クリアー。
そして大きなアオウミガメが悠然と姿を現し・・・
カメもクリアー。
悠然と泳ぐカメを眺めながら僕は興奮と安堵を覚える。
その直後、
そのカメを見ながらシュウレイさんは
悠然とボタン押し間違え爆浮上を始め、
僕は興奮と危機感を覚えた・・・。
ホテルに戻り、
リゾートのプールサイドと「月が浜」を隔てる数メートルの
木のトンネルを抜けると、
今まさに沈みゆく夕日が、水平線の彼方に赤と紺色の
グラデーションを瞬かせている。
金色の液体を片手に、黄昏る。そして黄昏る。また黄昏る。
波の音だけ。
ざーあざざざー・・・
ざざーざざざー・・・
日が暮れて、どっこらしょと今日のディナーへと向かう。
2日目の朝も気持ちのいい天気に恵まれて、海も問題なさそうだ。
小さな民家ほどもある、何百年と成長を続けてきたんであろう
巨大なサンゴ。
天地逆さまになったテーブルサンゴから、
また天に向かってテーブルを広げようと成長を始めたサンゴ。
何度も訪れたであろう存続の危機を、
必然に従って乗り越えてきたんだろう。
なされるがままに、なすがままに。
穏やかに暮れる2日目の夕焼けは、星砂のビーチに寄り道して、
目を離した隙にジュンさんにフライングビールを許し・・・。
そして今宵は、
最近美味しいと評判のイタリアンのうわさを聞きつけ、
ワインメイン。
肩寄せ合い、
真剣にワインを選んでくれるアキラさんとジュンさんの背中に
恐らくそこにいた全員がほっこりとしたはずで、
生パインを嬉しそうに絞るトキワさんの顔に、
恐らくみんな幸せを少し分けてもらったはず。
ボトル握りしめるアヤカも、前日までの体調はどこ行ったーっ
ってな顔してる。
そして、お気づきだろうか・・・
ワガママ気ままな我々の要望が一つ満たされていないことに。
マンタみたい。
さぁ、ダイビングラストDay。
「風はここ3日で一番いいので、マンタポイント狙いましょうっ。」
男コメキの英断の一声から幕が開ける。
流れのある、しかも中層を泳ぐ、
ここまでのダイビングとはレベル段違い。
黒潮が当たるのか、どこまでも透き通る水の青さも段違い。
水から上がった皆さんの、バテかたも段違い・・・。
カトーさん、昨日までの優しかった海に想い馳せながら、
ひと言。
「死ぬかと思った」
かとーさん、大変だったのはわかりますけどね、
ほんとーに死ぬかと思ってるのは、ウミシダのほうです。
マンタは惜しいところまで行ってた感じは多分にしましたが、
ナポレオンとカスミアジ、そして~、バラクーダ!!!
が、その穴を埋めてくれました。
素晴らしい海。
最後の夜は西表の老舗のお寿司屋さんで、美味しい料理と
辛口の純米酒、そしてもっと辛口なヒロミさんの物言いで、
その数日の想い出を語り尽くします。
風は強かったけど
暖かくて
水が綺麗
ゆっくりと潜り
カメとも会えた
マンタはナポレオンとバラクーダで埋め合わせ
ほぼパーフェクトなガイディング、
トシキありがとう。
皆で感謝の気持ちとして、
あの読みづらいぼろぼろのスレートを捨てさせて、
新しいの買ってあげようと話してたんだよ。
半分はクレームで出来ている。そんな話だけどね。
4日間ありがとう。ありがとう。
最後に、陸路も盛り上げてくれた生き物たちにも、
感謝を込めて。
種の繁栄をご祈念しつつ、また会える日を楽しみに。
ぼくたちは、
石垣島を経由して、東京までの長い帰路に着きます。
まさ