2020.5.8(金) またまた玉手より
前回までお話をしたウミウシについて。
今回は前回書ききることが出来なかった、
生殖器、卵、そしてエサをお話します。
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前回、ウミウシの生殖器は、体の右側面にあると言いました。
ウミウシは『雌雄同体』なので、
雄として、雌としての生殖器両方を持つとも言いました。
ちなみに、人間は『雌雄異体』と言います。
ただ、上の写真のように僕たちの目で確認できるのは、
右側面にある物体(交接器)、1つしか確認できません。
・・・・・・なぜ。
実はこの透明な交接器の中に、
雄としての生殖器が1本(精子を別個体へ送る管)、
雌としての生殖器が2本あります。
(精子を受け入れるための管と卵を産出するための管)
こういった単体で3つの生殖器を持つことを
『三道式生殖器官』と言います。
3つの内1つの、別個体から精子を受け入れる生殖器の中には
交尾嚢(こうびのう)という器官があります。
交尾嚢は別個体から受け取った精子をすぐ受精させず
一旦保存しておく器官です。
ここには、貯めた精子を分解消化する機能があります。
どういうことなのか。
ウミウシ自身が子どもを残せる健康状態ではない時、
(お腹が空いている等)
別個体から貰った精子を自らの食料にしてしまうそうです。
人間の世界では、想像つかないことですね。
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動物同士が生殖行為をすることを『交尾』と言いますが、
ウミウシ界では『交接』と言います。
何が違うのか・・・。
交尾や交接は、異個体間で配偶子をやり取りするために
互いの体の一部をつなぎ合わせる行為であることは一緒。
ただ・・・、
『交尾』とは、生殖器を直接つなぎ合わせる生殖行為。
『交接』は、それ以外の方法による行為だそうです。
ウミウシの場合は、
右側面にある交接器を繋ぎ合わせる行為ですね。
他にどんな生物が交接なのか。
実はイカも交尾ではなく、『交接』だそうです。
ウミウシと違い、イカのオスは精子の入ったカプセルを
『交接腕』と呼ばれる特殊な脚でメスに渡します。
やがてメスが産卵を始めると、
体にくっついたカプセル内の精子と受精する仕組みだそうです。
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次は、ウミウシの卵について。
卵を産出するところは、最初に説明した身体の右側面です。
産出される卵は、薄いカプセル(卵殻)に包まれ、
すべての卵を一つのゼリー質でコーティングして卵塊にします。
その後、産み付ける場所を決めたら産出します。
卵塊は岩や海藻などの上に産みつけられますが、
決まったルールがあるわけではないようです。
ただ小型の種は、水面に産み付けることもあるそうです。
ちなみに下の写真のウミウシの下にある、
白く渦巻き状のが卵です。
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卵塊の形状は様々なものがあり、
袋状、ひも状、リボン状、そうめん状などがあります。
色は、白色や黄色、そして赤色など。
サイズは大きくても5㎝ほど。
岩壁のそこら中についているので、
今度探してみて下さい。
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では、ウミウシのエサについて。
彼らは、肉食系もいれば、草食系もいます。
僕たちがウミウシのエサを見つけることが出来れば、
今までよりもウミウシが見つかりやすくなるとは、思います。
ただ、100%見つかるとは限りませんのでご注意を。
種類もさまざま、
カイメン、コケムシ、クラゲ、そしてウミウシ等です。
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まず、1つ目は、海綿(かいめん)です。
上の写真だと、紫色の部分ですね。
海綿は、世界中のあらゆる海で観察されます。
大きさは、数mmから1mを越える種もあり、
材質は僕たちが日常で使用するスポンジと同じです。
上の写真では、
『カイカムリ』というカニが海綿を背負っていますが、
ウミウシの場合海綿の先端で、海綿を食べています。
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
海綿の次は、コケムシです。
コケムシは、僕たちがたまに言ったりしているので、
聞いた事があるかもしれません。
マサさんはよく『鼻毛みたいなの』と言っています。
上の写真では、ウミウシが乗っているやつがコケムシです。
砂地から雑草のように生えていたり、
岩の隙間に隠れていたりもいます。
ウデフリツノザヤウミウシ(ピカチュウ)などは、
コケムシについている確率が高いと思います。
ウミウシ食い。
ここまでは、草食系なウミウシが食べるものをご紹介しました。
ここからは、肉食系ウミウシについて。
例えば、上の写真。
これは、アオウミウシを食べている、
黄色い斑点模様のキイボキヌハダウミウシです。
通りすがりに見つけたウミウシを見つけては、食す。
たまたま近くを通ったら食べられるなんて、
たまったもんじゃないですね・・・。
この他にも、肉食系はいます。
例えば『アオミノウミウシ』。
伊豆ではまず観察することが出来ません。
観察されるのは、日本であれば八丈島などの温暖な地域。
彼らの食事は、カツオノエボシ、
別名:電気クラゲの猛毒なクラゲを主食として食べます。
僕たちがカツオノエボシを触れた場合、
最悪死に至る程の危険なクラゲを食べてしまうのですから
相当凄いですね。
こんな感じで種類によって、食事も様々。
なので、今後ウミウシを探す際は、
『このウミウシを見たいから、このエサを探そう。』
とすれば、見つけやすいかもしれません。
まぁ、そのエサさえも探すのは少し大変なのですが・・・。
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前回と今回で、
ウミウシの仲間、部位、生殖活動、卵、
そしてエサについて調べてきました。
このことを知ってからウミウシを探すと、
違った見方ができるかもしれません。
そういうのに役立てば良いなと思います。
分かりにくかったら、ごめんなさい。
不明な点があれば、なんなりとお申し付けください。
それはもう熱く、熱く、熱くお伝えしますので。
ただ暑苦しかったらごめんなさい。
ゆきや