2020.5.13(水) また玉手です
ウミウシの貝殻の退化と体色について調べたのに、
すっかり書き忘れていました。
本当は前編で書くつもりがすっかり忘れ・・・。
このまま無かったことにしようか。
気になった人だけに言おうか。
迷いました。
ただ、書きたいので書きます。
なぜ、貝殻を退化させたのか。
なぜ、体の色がカラフルなのか。
では、スタートです。
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実は貝殻の退化と体がカラフルになったことは、
関係していると言われています。
前編でお伝えしましたが、
ウミウシは貝類の仲間で、
進化、成長していく過程で貝がなくなり、今に至ります。
貝とは、外敵から身を守るためのもの。
そんな大事なものを失っても平気なのか。
中身だけになっても平気なのか。
苦渋の決断だったでしょうね。
でも彼らは捨てることに決めたみたいです。
なぜ捨てたのか・・・。
それは2つの理由があると言われています。
1つは、水中で炭酸カルシウムを摂取するのが難しいこと。
炭酸カルシウムを摂取してどうするのか。
サザエを始めとする貝類、ウニ、そしてサンゴは、
石灰化生物と言います。
石灰化生物とは、
貝類やサンゴなどの炭酸カルシウム骨格を形成する生物。
この石灰化生物は海中で炭酸カルシウムを摂取することで、
体を硬く保つことが出来ます。
ただ、1750年代の産業革命以降、海洋酸性化が進み、
海水中の炭酸カルシウムが減少してきている影響で、
石灰化生物の骨格形成が難しくなってきているそうです。
2つ目の理由は、外敵からの攻撃。
炭酸カルシウムを摂取するのが難しくなってきている中、
やっとの思いで殻を作っても、
アオブダイやイシダイなどの歯が強硬な魚が、
簡単に壊してしまうのです。
こんな2つの理由があり、
ウミウシは貝殻を捨てた、
若しくは退化させたと言われています。
苦労して作ったのに、簡単に壊されたら、
そりゃあ嫌になりますよね・・・。
ただ、殻を無くしちゃうと中身だけになってしまい、
自分を守る術が全くなりました。
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そこでウミウシは考えました。
『自分自身を食べるのがNGな生き物にしてしまおう』と。
実はウミウシたちが
何気なく食べている海藻や海綿、コケムシなどには
毒をもっている種類がいるんです。
例えば、海綿は固着生物と言います。
固着生物とは、水中の固形物(岩など)に付着している生物。
言ってしまえば、好き勝手に動けない訳です。
そこで動けない海綿は考えました。
『このままでは、食べられ放題だ。
どうする俺・・・。どうする。』
どうにかして自分の生命を守らなきゃいけない。
悩んだでしょうね。
悩んだ結果、
『自分の体内に毒をもってしまおう』
という結論にたどり着きました。
強いですねー、僕がそんなことしたら、
その毒でたぶんすぐ死んじゃうでしょうね。
こうして海綿は基本的には襲われない生物となりました。
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ただ、ウミウシたちは、その毒に耐性があったようです。
毒をもつ海綿を気にせずに食べ、
自分の中に毒の細胞を取り込んでしまったみたいです。
こうして、ウミウシは他人の力を利用して、
なかなか外敵から襲われない生物へのし上がりました。
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たぶんウミウシと僕は気が合わないでしょうね。
僕なら迷わず、自分の体を鍛えますもん。
自分の身体を強くする方法はなかったんでしょうか。
それにしても賢い。
やっぱり、見習った方が良いのかも・・・
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ウミウシの身体の色は、
食べたエサや毒が関係しているそうです。
なので、カラフルだから目立つではなく、
カラフルだから『俺は危険だ』とアピールしているのです。
ただ、フグ等は元々体内に毒をもっているので、
気にせずウミウシを食べてしまいます・・・
どこの世界にも、上には上がいますね。
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世の中にはウミウシを食べた人がいます。
その人は、キイロイボウミウシを試食しました。
感想は、『えぐみが凄く、酷く吐き気がする』ほど
マズかったそうです。
人間に害を及ぼすほどの毒ではないにしろ、
食えたものではないみたいです。
ちなみに昭和天皇も生物学者として、
ウミウシの研究をしていた過去があります。
試食もしたことがあるとか・・・
素のまま煮て食べみたり、
甘く煮付けたり。
『美味しかった』とは、どこにも書いてありません。
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彼らが本能でそうしたのか、
それとも僕たちのように脳を使ってそうしたのか。
ウミウシの全てが分かるのは、
一体いつになるんでしょうね。
ゆきや